1994年 富士登山記

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第五章 富士急ハイランド

 バスの出発時刻となった。乗るバスがどれなのか迷ったが、無事に乗車完了した。さて、富士登山を終えた私達が次に目指すのは、「富士急ハイランド(山梨県)」という遊園地だ。富士登山の疲れを癒すため、今回の利用目的は「休憩」と「入浴」である。そこに着くまで1時間ほどかかったので、昨夜1時間も寝ていない私は寝ていった。

 ちょうど目が覚めた頃に、富士急ハイランドに到着した。私は登山の格好のままだったので、こんな8月に防寒着を来ていたが、不思議と暑くは感じなかった。入場すると、休憩所のある建物の中へ入った。一同が向かった先は、「富士の間」という和風の休憩所だった。私は喉が渇いていたので、まず飲み物を飲むと、再びそこで仮眠をした。仮眠から目覚めると、大浴場へ行き、極楽の入浴。その後、再び仮眠をしただろうか。20分ほどして昼食となった。

 私達は食堂へ向かった。料理は豪華とはいえないが、富士山で食べた副食物よりは美味だった。そこでは、富士山五合目でのツアーの記念写真も購入した。しかし、その記念写真は背後の富士山がガスに覆われて見えていなかったため、合成で富士山の山体部分がはめ込んであった。

 食事が終わると、再び「富士の間」に戻り仮眠をした。ツアー客のほとんどは登山で寝不足のため、一様に仮眠をとったのである。皆、熟睡していた。

 富士急ハイランドに来たのに遊園地には目もくれず、仮眠ばかりしていたが、午後2時、「出発」の声がかけられ、私は起き上がり、バスで出発した。まだ眠かったので、車中でも眠っていった。

第六章 ワイン工場見学~武田神社

 1時間ほどで次の目的地、ワイン工場に着いた。ここ山梨県は、ブドウの産地なのだ。それでワインも盛ん、ということでワイン工場見学も行程に含まれたのだろう。ツアーで工場内に入り、ワインについての展示を見た。奥の方に進んでいくと、ワインの無料試飲ができた。アルコール分やワインの原料が様々で、興味深かった。中には、子供も飲めるようにアルコール0%のブドウワインもあり、(未成年の私は)それを飲んだ。その他、色々試飲してみた。旨い、とにかく旨かった。試飲を楽しんだ後、その先の売店ではワインやワインを原料とした菓子類(ワインまんじゅうなど色々)が置いてあった。そうして、工場を後にした。

武田神社

 次に訪れた場所は「武田神社(山梨県甲府市)」という所である。ここは、武田信玄の英霊を祀り、大正6年に創建された神社である。私達はバスから降りると、神社まで少し歩かなければならなかった。神社に入ると、お水で手を清めてお参りをした。その後、武田神社の売店に寄った。ここでも何も買わなかったが、無料の美味しい健康茶をいただいいて、バスで出発した。

 次に向かう先は、予定では「昇仙峡」のはずだったが、変更になって山梨名物ブドウの店のような所へ行った。そこでは、たしか様々な種類のブドウの試食を楽しんだ。旨かった。この店ではブドウも売られていた。

第七章 湯村温泉

 その店を後にすると、今日の宿泊先である「明治・湯村温泉」という旅館に直行した。聞く話によると、この旅館は大変古い旅館らしい。また、温泉のお湯はぬるめで、疲労回復に効果があるそうだ。早速客室へと向かった。部屋は3階で、「まきば」という名前の部屋で、大人数が入れる広い部屋だった。部屋に入ったらまず、備え付けの美味しい茶と菓子を頂いた。私は富士登山で疲れていたので、しばらく横になった。30分ほどして、旅館内の温泉へ入りに行った。温泉は2階にあり、浴槽は結構広かった。話に聞いた通り、お湯はぬるかったが、気持ちよかった。疲労回復に効果があるとは、富士登山後の疲れた体を癒すには最適である。風呂から上がり、着替えている途中、同じツアーの客と会ったので、富士登山の話などを語り合った。

 温泉を出て部屋に戻ろうとすると、どうやらもう夕食の時間だとのことだった。そこで、ツアーの集まる2階の宴会場へ向かった。夕食のメニューは、この旅初めての豪華な料理だった。また、山梨名産ブドウのワインも出された(私を含む子供にはアルコール分の入っていないブドウジュース)。味は旨い、とにかく旨い。満腹までご馳走になったら、部屋へ戻った。

 午後8時頃に戻ったとき、部屋にはすでに布団が敷いてあった。早速布団に潜り込み、テレビでも見ながら寛いだ。それから40分~50分ほどしたら、私はまた、温泉に入りに行った。そして部屋に戻ると、もう家族たちは寝ていたので、私も寝ることにした。

 たっぷり寝て、翌朝は午前5時30分頃に目覚めた。 荷物の整理などをしたのち、温泉へ入りに行った。これで3回目の入浴になるが、添乗員が「湯村温泉は3回入ると疲れがとれる」と言っていたので、それを達成したことになる。 気持ちのよい朝風呂を済まし、部屋に戻ってしばらくしたのち、昨日の宴会場へ行って朝食をとった。おいしい料理をたくさん食べた。 食べ終わると部屋に戻り、出発の準備などをした。

第八章 宝石工場見学

 午前8時、旅館を後にしてツアーのバスに乗った。 この日は夏休み最後の日曜日ということで、渋滞が予想されるらしく、急遽出発を予定より30分早めての出発だった。旅館の人が、私達のバスにいつまでも手を振っていた。

 3日目最初の見学地は「宝石工場」である。 ここには30分ほどで着いた。工場内へ入ると、まず、色々な宝石が展示してある所を通過した。 そのまま、宝石店につながっていた。 そこでは、最初に無料の宝石のキーホルダーを頂いた。続いて、ためになる宝石についての説明を聞いた。 次に、宝石店内を巡った。しかし、当然、高価なものばかりで、何も買うことはなかった。 それで退屈だったので、設置してある椅子に座り、無料の美味しいお茶を飲んでいた。 そうこうしているうちに、出発の時間になった。

第九章 霧ヶ峰~白樺湖

 「甲府昭和IC」から高速に乗り、「諏訪IC」で降りた。その道中、高速道路上で日本一標高が高い地点(標高1,000㍍ほど)を通過していった。 高速を出たバスは山道を登る。私はバスに揺られながらつい眠ってしまった。ずっと眠っていて、目が覚めたときには目的地に到着していた。 目を覚まして車窓を見ると「霧ヶ峰」という文字が目に入ってきた。「ああ、もうここは霧ヶ峰なんだ。」 霧ヶ峰(長野県)とは、この高原のことを指すらしい。霧がしばしば発生することがその名の由来らしい。

  バスから降りると、涼しさを感じた。やはり標高が高いからであろう。辺りの景色は、なんとも美しくのどかな高原の風景だった。 到着後、霧ヶ峰駐車場にある売店へ入った。

  まず、牛乳の無料サービスがあったので1杯頂いた。やはり、高原の特産の牛乳とあって、とても美味しかった。 飲み物やアイスクリームも売ってあった。アイスクリームが一番人気だったようだが、私は「生リンゴジュース」を買い、美味しく頂いた。

 売店を後にして、バスで出発した。車窓からは霧ヶ峰高原の美しい風景が堪能できるはずだったが、それは叶わなかった。 なぜなら、私の座っていた座席は山側だったからである。そこで、素晴らしい光景が広がっている窓側に座っていた方にお願いして、1枚景色を撮影してもらった。

霧ヶ峰高原

  やがて、バスは山の頂上を通過していった。霧ヶ峰駐車場を出発して30分ほどして、「白樺湖(長野県)」に到着した。ここは、大門峠という所の南に昭和21年に出来た人造湖で、面積は39万㎡である。

 私達は、白樺湖畔の店に入り、ここの2階で昼食をとった。そこは、かなり広い食堂であった。美味しい食事をしながら、ツアーの人達と会話もした。食事が終わると、1階の売店を散策し、土産品を眺めた。相変わらず、何も買わなかったが…。その後、集合時間が押し迫ってきたので白樺湖の写真を撮り、バスに乗り込んだ。全員が揃うと出発した。

白樺湖

第十章 帰途

 これから、一路名古屋空港へと帰路の途に着くので、かなり時間がかかる。そこで、バスガイドが車内で音楽を流してくれて、高速に入ってからは備え付けのテレビで「はぐれ刑事純情派」のビデオを見せてくれた。途中、サービスエリアで休憩をとった。そこでは、美しい山々の写真を撮り、高速道路の地図をもらい、用を足してきた。その後、バスは8500㍍という非常に長いトンネルをくぐり抜け、「富士川SA」に着いた。

 ここには、バスガイド達の打ち合わせのため急遽立ち寄ったらしい。事故による渋滞でバスの運行が予定より大幅に遅れたので、どうも帰りの飛行機に間に合わない恐れがあるとのことだ。そのため、名古屋空港とも連絡していたようなのだ。名古屋空港まではあと少しで、順調に行けばなんとか間に合いそうなので、ここから先は運転手はできる限り運転を急いだ。

 しばらく行くと、渋滞は収まってきた。どうやら、なんとか間に合いそうだ。もし間に合わないとすれば、次の便(午後8時発)まで待たなければならない。 「小牧IC」で高速を降り、一般道で空港まで向かった。バスガイドや添乗員は、最後の挨拶などをしてくれた。

 空港に着いたら、急いで搭乗手続きをし、X線検査を受けた。「あっ!」私は焦った。天体撮影用の高感度フィルムを2本、X線検査に通してしまったのだ。高感度フィルムはX線を絶対に避けないといけないのに、急いでいたせいか、検査官に事情を説明したのに無視されたのだ。高感度フィルムは1本1000円ほどする。これはショックが大きかった。

 そんなトラブルを経て、帰りの航空機に乗り込んだ。便は「ANA227便」である。指定席へ向かうと、「…おや、窓側ではないではないか。」行きの便では窓側に座れたので、少し残念がっていたところ、親切にも窓側の座席に交替してもらえることになった。バスの空港到着が遅かったため、飛行機の離陸までは僅かしか時間がなかった。

 離陸すると高度が上がっていき、川などがよく見えた。しばらくすると、スチュワーデスがおしぼりを配りに来た。私は手を拭きながら、お菓子が出されるのを期待したが、出されたのは飲み物だけであった。私は冷たいウーロン茶にした。機内のスクリーンでは、「ドラえもん」を放映していた。また、全日空の「マリーンジャンボ」のグッズが抽選で当たるイベントのチラシをスチュワーデスが配っていたので、私ももらった。福岡空港までの飛行時間は、1時間5分となっていたが、あっという間だったように感じた。徐々に高度が下がってきて、私はシートベルトを着用して着陸を待った。窓の外では太陽が沈みかけていて美しかったが、あいにくカメラのフィルムを使い果たしており、写真に収めることができなかった。

  航空機は福岡空港に着陸した。忘れ物がないか点検して、座席を後にした。ターミナルビルに入ると、預けていた荷物を受け取ったが、もうツアーでの集合はしなかったので、3日間を共にした方々とはここでお別れとなった。
家族と空港を出ると、マイクロバスを利用して、私達の車を駐車している駐車場へと向かった。

  そこから、私達の車にて一路、熊本市内にある自宅へと向かった。もう午後7時頃だったので、夕食を福岡市内で済ませた。途中、運転手は道に迷ったものの、無事に帰宅を果たした。家の戸を開けると、愛する飼い犬が鳴いて喜んだ。家の留守番をして頂いた方も温かく出迎えてくれた。留守番代を手渡して、彼は去って行った。

おわりに

 こうして、初めての日本一の富士山への登山の旅は、終わった。振り返ってみると、高山病にかかったことなど、「苦」だけしか頭の中に残っていないが、だけどもやっぱり楽しかった。やはり、旅行は楽しくなければ、良い思い出は作れないのだな…、と私は思った。
登山中に耳にしたことだが、「富士山に2回登る人は馬鹿」と聞いた。大変な思いをして登らなければならない山だから最もであろう。ならば、私は馬鹿ということになってしまう。なぜなら、この山にもう一度登ってみたいと思うからである。そして、今度は山頂でたっぷり時間をとって「本当の山頂(剣ヶ峰)」を目指したいのである。

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